劇場版 艦これ ネタバレ無し・有り感想

アニメ映画「劇場版 艦これ」を観て来た感想を、ネタバレ無しと有りに分けて記しました。

ネタバレ無し感想

感想を一言で表すと、物語・脚本・音響・3DCG・映像効果などひっくるめて、映像作品として上手く纏まってゐて、豫想以上に楽しめました。

そもそも劇場版が気になりだしたのは、SS速報VIP私が好きな艦これ小説にて、作者にお薦めされてゐたことが切っ掛けです。私が観に行ったのは6週目で、来場者特典が「これって壮絶なネタバレなんぢゃ…?」といふ代物でしたが、寧ろその画に惹かれて、最終的に観に行くことを決めた節が有ります。そして結果的に正解でした。

映画自体を観に行くのも数年振りでしたが、何よりアニメをあれだけ集中して観たのも久し振りでした(普段はニコニコ動画などで、ながら作業の片手間で見ることが多いので)。その分、映像も音声も全身全霊で受け止めて、その良さを十二分に味はへたと思ひます。

ストーリーにネタバレの無い範囲で内容に触れると、劇場版は次に挙げる通り、地上波アニメ版で不満に感じた点を悉く打ち消しに行ってゐました。

この完成度によって、まさかアニメの登場人物だけでなく、アニメの視聴者をも救って来るとは、心憎い作品でした。

又、吹雪が主人公といふことは、ゲームでもアニメでも一貫してゐますが、吹雪などの声優をされてゐる上坂すみれさんのブログでは、この作品が次の様に紹介されてゐます。

これが絶妙な表現で、映画を観終った身としても非常に納得できました。


蛇足ですが、劇中の日本語表記は「左から右書き・常用漢字」でした。正字が好きな私としてはちょっと残念です。仮名遣は不明でしたが、これも恐らく「現代仮名遣い」なのでせう。

これ以降はネタバレ全開の感想ですので、未見の方は御注意ください。

ネタバレ有り感想

上坂すみれさんの言はれたひとつの答えとは、「艦娘が轟沈すると深海棲艦になることが有り、逆も然り」といふ設定を確定させたことでせう。艦これは小説や漫画などの作品でも設定が異なるさうなので、飽くまで「アニメ世界では」といふ註釈は必要ですが(それが「ひとつの」といふ単語に込められてゐますが)、はっきりと言ひ切ったことでストーリーが引き締まって、非常に良かったと思ひます。

睦月はもう一人の主人公については、私は睦月よりも如月の方が「もう一人の主人公」で、睦月は寧ろヒロイン枠だと感じました。最初から居るか居ないかではなく、深海棲艦化といふ大きな変化が訪れ、それに向き合って行くのは如月の方で、睦月はそれを必死に支へてゐるのが、主人公とヒロインに当て嵌る様に思へます。もしかしたら上坂さんもそれは承知で、ネタバレ防止の為に、睦月の名前を主人公として出したのかも知れません。

ゲーム上は有り得る複数同一艦は、アニメ世界には無いといふ設定に思へました(敵を除く)。確かに睦月が「別の」如月に会った時にどんな顔をすれば良いのか(それを合理的に説明するのにどれだけ尺が裂かれるか)を考へると、省略して正解と思ひます。又、地上波アニメと違って提督が終始空気だった(長門が一言言及しただけ)のも、ストーリーの軸がブレなくて良い判断だったと思ひます。

後半で吹雪が鉄底海峡に沈んで行く時、どうやって巻き返すのか注目してゐたら、一つの大きな出来事ではなくて、これまで自分が経験してきた積み重ね(託された思ひ)によって覚醒したのも、成る程と思はされました。「行けば何とかなる」といふ点は少しご都合主義が過ぎると感じましたが、逆に言へば王道でもあり、変にイベントを挟んで雑な伏線を張られるより遙かにマトモでした。

艦娘も敵も恰好良く描かれてゐましたが、特に妖精さんの可愛さと恰好良さが同居した様は、艦これ世界を構成する確かな一要素になってゐて、和むと同時に心が踊りました。又、吹雪に主人公補正が効き過ぎな気もしましたが、夕立はいつも通り負ける気がしない活躍で、観てゐて何か安心しました。

ネタバレ無し感想で「登場人物が救はれた」と言ひましたが、これは「イマイチだったアニメに登場した人物も含め、皆が恰好良い見せ場を持てた」のと同時に、「ストーリー上、如月と吹雪が救はれて、前に進んだ」ことも指してゐます。特に終盤、海上を漂ふ睦月と如月の艤装が向きを揃へてぶつかった所もさることながら、睦月が睦月のこと、忘れないでねと言った(如月の「如月のこと、忘れないでね」と対になってゐる)のには、完全にやられました。如月だけでなく睦月が好きなプレイヤーにとっても、感慨深い瞬間だったと思ひます。

奇しくも私が映画を観る切っ掛けになった艦これ小説で、「深海棲艦は沈めることで怨念から解放されて救はれる」といふ設定が有り、映画鑑賞中にその共通点に気づいた時には、何がしかの嬉しさを感じてしまひました。

総括して、「劇場版 艦これ」は間違ひ無く、観に行って良かった作品と言へます。