「鏡音PARADISE」(通称「かがパラ」)に一般参加してきましたので、当日の様子や感想を簡単に記しておきます。
最初に購入したボーカロイドが鏡音リン・レンであり、特別な思ひ入れのある私にとっては、鏡音だらけの同人即売会が開催されると聞き、居ても立ってもゐられなくなって、京都から名古屋まで足を伸してきました。実際に参加すると、会場は右も左も二次元も三次元もリンレンだらけで、正に鏡音天国(パラダイス)。とても幸せな時間を過ごせました。
VOCALOID PARADISEなどと違ひ、54スペース
といふ比較的小規模の会でしたので、各サークルをじっくり見廻ることができました。会場の広さもそれなりでしたので、特に開会初期の混雑は凄まじかったのですが、それだけ鏡音好きな人が集まったのかと思ふと、感慨深いものが有りました。
時間に餘裕があったので、昼に会場を抜け出して、近くに在ったボーカロイド界隈では或る意味有名なマジックスパイスを初体験して来ました。私はカレーの辛さがダメなので、最も辛くないスープカレーを頼んだところ、野菜の甘さでせうか、優しい味はひで、今まで食べたどのカレーとも違ふ不思議に美味しい味でした。その他にも、大須の商店街を一巡して大きさに感嘆したり、名古屋に住む友人に久しぶりに会って話ができたりと、とても充実した一日でした。
私が鏡音PARADISEで入手した作品の幾つかを取り上げて、気ままに感想を書かうと思ひます。ネタバレはそれほどしてゐない積りです。
プロデューサーさん、ボカマスですよ、ボカマス!
といふことで、田村ヒロさんの描いたアイマスキャラが後ろの方に2頁だけ出てくるのですが、それが拝めただけでもう幸せです。勿論それ以外にも、モジュールの成り立ちや、最終稿決定前のカラーバリエーションなど、作者ならではのお話も面白く読めました。ピアプロリンクがきちんと取ってあったのにも安心です。
やや話は逸れますが、モジュールの「蘇芳」の歴史的仮名遣は「すはう」で、普通に読むと「スホウ」になるはずが「スオウ」なんですね。「国府田」が「コフダ」ではなく「コウダ」と読まれるのと同じ現象なんでせう。一つ勉強になりました。因みに「藍鉄」の歴史的仮名遣は「あゐてつ」です。
極端な例が3つも詰まってゐます。しかも全部悲劇です。「あとがき」にもありますが、何故これをPの作品なので仕方ないね。
ただ、読後感は3つの作品で結構異なります。2本目の「幼いドン・キホーテ」はリンレンが主人公なのですが、本当に救ひが無い。なかなか陰鬱になれます。それに対して3本目は喜劇タッチで、沈んだ気分を見事に救って(掬って)くれてゐます。心憎い章立てです。
作品は全て三人称で、一人称小説が多い昨今の日本では珍しく感じましたが、心理描写も細やかで、十分に物語の世界に没頭できました。思ふに、場面転換のし易さは、三人称の方が有利かも知れません。
気になるのは、原作の曲名が書かれてゐないことです。最初の「acid」は黒うさPの「カンタレラ」だと思ひますが、後の2本が判らない。何か大人の事情が有るのかも知れませんが、原曲が気になっても辿れないのはもどかしい限りです。
尚、この本は何故か無料で戴けましたが、凄まじい読み応へでした。大盤振る舞ひに感謝感謝です。
前作の「愛を知る日まで」も読みましたが、このルカとマスターの関係は、すっごくニヤニヤできます。続篇期待です。歌ふことを題材にしてゐるのもボーカロイドらしくて、私的には好感度大です。
それと、59さんの描くルカの「睫毛力」が素晴らしい。20歳らしい、少し大人びた美しい睫毛です。キャラクタの輪郭線も、ほのぼの且つ惚れ惚れとする、柔らかい線で魅力的だと思ひます。
百合です。学園ものです。リンがモテモテです。レンは…それはそれでありです。
ぺり子さんのレンカも含め、とても美味しく戴けました。といふことで、第2巻はまだですか!?
ストーリーは原曲から大幅に肉付けされてゐて、リンレンの繊細な心理描写に、読んでゐて心躍りました。そればかりではなく、細かな風景描写の御蔭で、挿絵の無い箇所でも情景を想像し易くなってゐました。
又、「悪ノ娘」シリーズでありながらハッピーエンドを迎へるとのことで、「悪ノハッピーエンド」が好きな私としては、続きが楽しみであります。ただ惜しいことに、誤字や直した方が良いと思った表現が幾つか有りました。折角ですから、表にして次に載せておきます。
頁・行 | 原文 | 修正案 | 備考 |
---|---|---|---|
P3(前書) | 方はお勧めできません | 方にはお勧めできません | |
P8上L4 | 共をつけなければ | 供をつけなければ | 「伴」も可 |
P8下L2 | 頑なっていた | 硬くなっていた | |
P10上L11 | 中心 | 中で | 「中心で」も可 |
P11L5 | レンが移動する | レンが移る | 人に「移動」は硬すぎるのと、繰り返しを避けるため |
P11上L-4 | 数歩下がる彼の服の裾をリンに掴む | 数歩下がり、その服の袖をリンに摑まれる | 一文が長すぎて解り難いので分割、受け身の修正 |
P11上L-3 | 掴む | 摑む | 常用外の漢字は康煕字典体にするのが普通 |
P12下L9 | 払輪なければ | 払わなければ | |
P17上L6 | 大広間のサイド | 大広間の傍ら | 「大広間の脇」も可。原文だと「(大広間の反対側にある部屋ではなくて)大広間の方」とも読めるので |
P17上L-5 | 散りばめて | 散りばめられて | 受け身の修正 |
P17上L-3 | 入り交た | 入り交じった | 「入り交った」も可 |
P17下L6 | 楽しむ貴族達を咎める者は居らず | 楽しむ貴族達。彼らを咎める者は居らず | 一文が長すぎて解り難いので分割 |
P19上L-5 | 罵っても | 罵られても | 受け身の修正 |
P19下L5 | その言葉は言葉として空気に振動する事も無く | その言葉が空気を振動させることは無く | 一つのことを言ふのに遠回りすぎて諄いので |
P19下L10 | 手が添えていた | 手を添えていた | |
P20上L-2~L-1 | 手を握り~無かった。 | (削除) | 次の段落と重複してゐるため |
P22上L10 | レンは | レンが | |
P22下L3 | なだれ込み | 流れ込み | 「なだれ込む」は大勢が勢ひ良く押し寄せる場合 |
P22下L6 | 白色の窓の縁に細かな金の装飾が美しいそれを開け | 縁に細かな金の装飾が美しく施された白色の窓を開け | 「それ」が何を指すのか解り難かったので |
P22下L7 | ほくそ笑んだ | 微笑んだ | 「ほくそ笑む」は悪巧みで使ふのが普通 |
P22下L9 | 見れた | 見られた | |
P22下L10 | レンの心は | レンは | 直後の「胸の奥」と重複 |
P22下L11 | パーティ | パーティー | 表記揺れの統一、以下同じ |
P22下L11 | 会話を楽しみ、過ごしたのは楽しく充実した時間 | 会話を楽しみ、過ごしたのは充実した時間 | 「会話し、過ごしたのは楽しく充実した時間」も可 |
P23上L-4 | 感じながらも | 考えながらも | 前文の「感じ」との重複を避けるため。「思いながらも」も可 |
P23下L8 | 観念したのか、考えるのを諦めたのか | 観念したのか、考えるのを止めたのか | 「観念する」と「考えるのを諦める」は同じ意味なので、どちらかを削除するか修正案にする |
P23下L9 | 瞳を閉じた | 目を閉じた | よくある間違ひ。(瞳は目の中の瞳孔のこと) |
P23下L12 | それはリンの目の前に立った瞬間音が鳴り止んだ | (「それは」か「音が」を削除) | 一文に主語が2つ有るので片方を削除 |
P24上L-6 | 問いた | 問うた | 「言うた」を「言いた」とはしないのと同じ |
P24上L-5 | という事を告げ | と告げ | 諄いので |
P26(奥付) | PARADAIS | PARADISE | |
P26(奥付) | .co,jp | .co.jp | |
P26(奥付) | SPECAL | SPECIAL |
校正の視点からすると、後半の「誕生日編」から全体に指示詞や漢語が多く、論文やニュースの様な硬い印象を受けました。回り諄い表現も多かった様に思ひます。私個人としては、前半の「幼少期編」の方が洗練されてゐて、読み易く感じました。
序でに、題の「華片」は何と読むのか…「缺片」の当て字なら「かけら」かな? と、ふと疑問に思ひました。
前記の修正案を由宇さんに御報せしたところ、これらは鏡音ねいろで発行される豫定の完全版で修正されるとの御返事を戴きました。わざわざ有難うございます。
9名の絵師によるリンレンが味はへます。どうやら「猫」といふ共通テーマが有る様なのですが、それ以外は見事に絵柄も場面も異なってゐて、本全体が華やかになってをり、何度見返しても飽きません。
どのリンレンも素敵なのですが、マジマエリさんの絵柄に一番吃驚しました。絵の具を画用紙いっぱいに広げた感じで、とてもカラフルで勢ひがあって、幼さや活溌さや凄く伝はって来ます。尚、奧附には安心のピアプロリンク附きです。
夜宵さんの色んなリンちゃんを存分に堪能でき、満腹になれます。後ろから5~4頁目などでは天使なリンちゃんも拝めますが、鏡音廃にとってリンちゃんは天使なので、これでは循環定義ですね。はい。
何といふか夜宵さん家のリンちゃんは、丸い目をしてゐる時がとても可愛いと思ひます。あと、いろはさんの意外な色っぽさにやられました。
マイゴッドPの少女と少年シリーズの曲に対する全篇カラーのイメージイラストなんですが、歌詞に沿って絵が展開してゆく様は、まるで絵本です。明るい色づかひと後ろ向きな歌詞とのギャップが、強烈な印象を與へてくれます。
背景は基本的に白で、リンとレンの服も白。それ故に、カラフルな色が鮮明に目に飛び込んで来ます。尚、前半が涼さん、後半がまどろみさんの描かれた絵となってゐますが、似た配色・雰囲気に統一してあるからか、続けて読んでも違和感は有りません。
因みに、ニコニコ動画にこの本の動画版が有りますので、見比べると媒体の違ひが浮き出て来て面白いと思ひます。動画と比べると、本の方は圧倒的な解像度が有って、じっくりと細かな所まで観られます。